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電気通信大学 脳・医工学研究センター 第96回セミナー 2022/8/19

    電気通信大学 脳・医工学研究センター 第96回セミナー

   動物の行動から何が分かるのか~精神疾患のメカニズムを解明するための行動科学的解析方法~


◆日 時 2022年8月19日 (水) 13:30 – 15:00
◆会 場 オンライン配信

◆講 師森屋 由紀 先生
◆司 会牧 昌次郎 教授

◆概 要 実験心理学的な手法を用いて動物の行動に対する薬物効果を調べる行動薬理学は、神経科学の進歩と共に作用機序の解明の一助としての役割を果たしてきた。行動実験で最も重要なのが肉眼による行動観察であり、この観察結果に基づき薬理効果の大まかな仮説を立て、投与量や解析方法が選定される。動物の行動実験をどのようにすればヒトに外挿できるかについて、行動薬理学的には確たるアルゴリズムは存在しない。しかし、動物実験と臨床知見が相互にヒントを提供し合うことが有意義であると考える。
薬物依存研究の領域において行動薬理学的手法は多くの進歩を遂げてきた(Koob and Le Moal 2001)。初期の行動薬理学では試行錯誤を繰り返しながら、薬物が行動に及ぼす効果についての知見が積み重ねられてきた。北米では1960年代に麻薬や幻覚剤の乱用が広がり、この問題に対処すべく膨大な予算を組み、動物による薬物の自己投与という新たな研究領域が生み出された。Headleeら(1955)が最初に薬物の自己投与法をラットで確立しWeeks(1962) やThompsonとSchuster(1964)もマウスやサルを用いて静脈内自己投与法による実験結果を報告している。これまでの行動薬理実験の結果からヒトに乱用を引き起こす多くの薬物において、動物の場合でも自己投与が生じ、ヒトに乱用が生じなかった薬物には動物による自己投与も観察できなかった。近年では自己投与法に加えて様々な手法(条件付け場所嗜好性試験、脳内微小透析法、オープンフィールド試験、自発運動量測定)により薬物依存の研究が進められている。

神経科学の進歩と共に、作用機序解明の一助として行動薬理学の役割は大きい。薬の効果ばかりではなく、安全性や毒性試験でも行動実験は重要である。しかし、これまで行動実験は女性(雌性)の性周期により研究結果の解釈が複雑になるという理由で、ほとんどが男性(雄性)を対象に行われてきた。臨床データでは精神疾患の発症率、症状や治療効果には性差があるにもかかわらず、雄性のみを対象としたこれまでの研究デザインでは限界がある。私たちは、性差の観点から既存の依存性薬物がどの様なメカニズムで依存を引き起こしたり、有用な効果を発揮するのかを動物行動レベルで研究し、(1)ストレスに起因する物質依存の予防法や治療法の改善、(2)早期からの適切なうつ病の薬物治療、(3)テーラーメイド疼痛治療を目指している。

◆参加費 無料
◆参加申し込み こちら(脳・医工学研究センターホームページへ)

【お問い合わせ先】
田中 嘉法
メールアドレス: tanaka@ecc.pc.uec.ac.jp
電話:042-443-5586

■脳・医工学研究センターホームページ
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更新日:2022/08/12