REDEEM –医療工学技術者創成のための再教育システム

カリキュラムの概要

REDEEMの教育では、下記の通り、講義科目、実験・実習、および先端医工学シンポジウムを3本の柱としています。

I 講義科目
1. 基礎医学1
(1) 人体解剖生理学(1〜12)
(2) 免疫学

2. 基礎医学2・基礎生物学
(1) 生物学(1,2)
(2) 分子細胞生物学(1〜4)
(3) 特殊器官の解剖・生理学(脳・神経系1,2)、(特殊感覚器(聴覚))
(4) 病理学(1,2)
(5) 薬理学(1,2)

3. 臨床医学
(1) 内科学(総論、診断学、各論(循環器内科),各論(代謝内科)
(2) 外科学(総論、治療学、各論(腹部一般外科),各論(頭頸部外科)
(3) 画像医学(総論、各論(核医学及び放射線影響学),各論(超音波画像),各論(脳血管画像・インターベンション)
(4) リハビリテーション医学

4. 医工学 他
(1) REDEEM概論
(2) 医工学の基礎(機械工学系,電気工学系)
(3) 生体材料学
(4) 生体工学(感覚代行,人工臓器)
(5) シミュレーション医工学(基礎,応用)
(6) スポーツ医学
(7) 医療法制・薬事法(1,2)
(8) 医療機器市場概論
(9) 実験・実習ガイダンス

Ⅱ 実験・実習
(1) 分子生物学実験(1〜6)
(2) 細胞生物学実験(1〜6)
(3) 生理学実験(1,2)
(4) 解剖学実験(1〜6)

Ⅲ 先端医工学シンポジウム
年1回開催し、通常の講義で触れることのできない最先端の医工学について講究する。

教育の実施形態

集中講義:年2回 各1週(5日)合計2週(10日)
出張講義:年間10回(9月—シンポジウムを除く毎月)
実験・実習:年2回 各1週(5日)同内容、各回24名定員

【講義】
合計52コマ(講義はすべて、一コマ90分)
集中および出張講義は全く同一内容を通年で実施する。従って、集中講義は8月、2月は異なる内容となる。

【実験・実習受講のための条件】
下記の必修講義を含む講義25コマ以上を受講していること。
(1) 生物学・分子細胞生物学 4コマ以上
(2) 人体解剖生理学(特殊器官の解剖・生理学を含む)5コマ以上
(3) 実験・実習ガイダンス1コマ

【修了要件】
講義40コマ以上(ただし重複なし)に出席して所定のレポートを提出し、実験・実習20コマを受講したものには、修了証を授与する。

結論

 REDEEMの教育カリキュラムで私たちがユニークであると考えているのは、座学の基礎の上に、実験・実習を必修としているという点です。

  分子細胞生物学実験では、ゲノムDNAの抽出とPCR、培養細胞への遺伝子導入による細胞小器官の蛍光観察、さらに、生理学実験では、ウサギを用いたランゲンドルフ実験、そして、解剖実験では、受講者自ら手を下すウサギの解剖を実施します。これらの実験・実習は、それを専門とする医学・生物学者には全く初歩の常識的な内容ですが、普通の工学技術者にとっては、文字通り、見たことも聞いたこともない内容であり、普通の技術開発現場では絶対に経験できないものです。医療機器を開発する企業内においてすら、開発のためではなく、教育そのものを目的とする動物実験というのは、動物愛護の倫理的な観点から実施することはできないと聞いています。このような実験・実習は、教育を主たる目的としている大学でこそ可能なカリキュラムなのです。

 REDEEMのカリキュラムは毎年新しい内容を付け加えることにより発展しています。現在では、年間に52コマの講義と、20コマの実験・実習を提供しており、多分、我が国ばかりでなく、世界的にも例を見ない教育コースになっています。このような教育を通じてこそ、私たちは我が国の医療機器産業振興に役立つことができると考えています。どうぞ、志のある皆さんのご参加をお待ちしています。

参考文献

  1. 山野真裕, 松木範明, 沼山恵子, 武田元博, 早坂智明, 石川拓司, 山口隆美、「次世代医療関連産業中核人材育成のための実践的教育システム」の開発と実証研究、工学教育 Vol.57 No.2 pp.13-21, 2009
  2. N. Matsuki, M Takeda, M. Yamano, Y. Imai, T. Ishikawa and T. Yamaguchi, Designing a clinical education program for engineers: the ESTEEM project, Journal of Interprofessional Care Vol.24 No.6 pp.738-741, 2010
  3. 山野真裕, 山口隆美, 医療機器産業を担う技術者のための医工学カリキュラム「第2期 REDEEM」の開発, 医療機器学 Vol.81 No.5 pp.357-368, 2011
  4. REDEEM プロジェクトホームページ http://www.redeem.jp

更新日:2012/06/11